マダニが引き起こす感染症と予防対策

マダニが引き起こす感染症と予防対策

マダニが引き起こす感染症と予防対策

マダニの駆除と予防対策の方法は?山の中で遭遇するのがマダニ。一度寄生されてしまうと引き剥がずのは簡単ではありませんから、予防が大切です。

マダニが引き起こす感染症と刺咬予防対策

マダニの発生予防と駆除対策

マダニ類は、世界に3科約900種、日本にはヒメダニ科(Argasidae 通称soft tick)とマダニ科(Ixodidae 通称hard tick)の2科46種類が分布しています。

マダニはダニ目なかではずば抜けて大型であり、吸血後の体調が30mmに達するほど。吸血寄生性で、主な寄生先は哺乳類、鳥類、爬虫類です。そして、吸血の際にさまざまな病原体を媒介しうるため、重要な感染症媒介動物として認識されています。

皮膚の柔らかい部分に食いつき、満腹になるまで吸血するマダニ。シカやクマなどが暮らす山林に生息し、ハイキングや山登りに来た人間に取り付いてくることがあります。

食いつかれてしまったら素人では引き離すのが困難なため、マダニがいる場所へ出かけるときは肌の露出を避け、虫除けスプレーを吹き付けておくなど、必ず予防対策をとりましょう。

マダニによる感染症の被害にはどんなものがある?

マダニ媒介感染症の被害は、マダニ類に刺され、吸血されることによって生じます。そして、媒介可能な感染症の種類は、マダニの種類によって概ね決まっています。

日本に分布するマダニ種のうち、感染症媒介の観点で重要なのは、マダニ科のキララマダニ属(Ambloyomma,チマダニ属 Haemaphysalis,およびマダニ属 Ixodesの種です。

人体刺症(ししょう)の原因と発生時期

人が待機中のマダニ類に接触すると、マダニ類は肌の露出部や衣服に乗り移り、吸血に適した部位を求めて徘徊。そして、吸血に適した部位に達すると、寄生部位を定めて吸血を開始します。

つまり、マダニ類は最初に付着した部位から吸血するわけではないのです。

マダニの被害が増える季節は?

マダニ人体刺症の発生時期は、人の活動や肌を露出する季節と関係しています。

初夏から初秋にかけては、人が薄着をして野外に出ることが多いので、毎年この時期にマダニ人体刺症が多く報告されることになります。

日本では、マダニ種22種による人体刺症が確認されていますが、大部分の人体刺症は特定のマダニ種が原因です。日本のマダニ人体刺症の原因種として最も症例報告の多い種はヤマトマダニ Ixodes ovatus で、以下はシュルツェマダニ Ixodes persulcatus タカサゴキララマダニがいます。

南北に長い日本列島では、気候に応じて生息するマダニ類の種構成が異なるため、地域ごとに人体刺症の主要原因マダニ種は異なる。北海道、東北、および中部地方では主としてマダニ属の種。近畿以西の地方では主としてタカサゴキララマダニとフタトゲチマダニによる人体刺症が多いことが知られています。

ダニの種類による刺す場所の違い

マダニ種によっては、刺咬部位に違いが見られます。

  • ヤマトマダニ→顔面(特にまぶた)
  • アカコッコマダニ Ixodes turdus →頭部
  • タカサゴキララマダニ→趾間、陰部、肛門

マダニ人体刺症が増加した理由とは?

マダニ人体刺症の報告は、近年増加傾向にあります。増加の原因としては、単にマダニの数が増えたのではなく、次のような環境変化のが要因として考えられています。

  • ①アウトドア志向が増えて車で容易に野外へレクリエーションに出かけることが多くなった
  • ②山野の宅地化、リゾート開発により、ダニに遭遇する機会が増えた
  • ③減反政策、農産物の自由化、農林業従事者の高齢化による農耕地の放置
  • ④林地や里山の管理不足などにより、一部でマダニの生息地が増えた
  • ⑤植自然宿主となるウサギや野ネズミなどの野生鳥獣への狩猟圧が減ったことにより、マダニの生息密度がある程度異常に維持されている。
  • ⑥林で労働する人たちや山間部に住む人々はある程度マダニを認識していて、寄生を受けても自分で取ってしまうのに対し、アウトドア志向で野外に出かける都市部の人々は農山林部の人々よりは医療機関を利用しやすいので報告例として数字に出やすい。
  • ⑦ライム病や紅斑熱の発生もあって、臨床医、特に皮膚科医の関心が高まっていること

吸血して大きくなったマダニの虫体は、血液のように赤い色ではなく、灰色か黒褐色となります。顎体部は、根本まで皮膚に深く挿入されているので確認できず。背板も膨らんだ全体に比べて著しく小さい部分となり、脚も腹面に隠れて確認しにくくなってしまいます。

マダニ類の唾液の中には、痒みや痛みを抑える物質が含まれており、通常は宿主動物に気づかれることなく長期に渡って吸血し続けることができるのが特徴であり、非常に厄介です。

マダニ類に関する知識に乏しい医師も少なからず存在するため、医療機関において、吸血して膨大したマダニ虫体が、イボ、ホクロ、腫瘍と誤診された例も多々見られます。

マダニから身を守る予防対策

ピクニックやハイキングなど、山へ入るときはたとえ夏でも肌が露出しない服装をしましょう。

やぶの中はとくに危険地帯です。虫除けスプレーも忘れずに。

万が一、咬まれてしまった場合、痛くても虫本体に触れていはいけません。慌てて引き離そうとすると危険です。

応急処置として、食いついてる周辺部をマキロンなど消毒液で洗っておきます。

咬まれたら?すぐに取り外そうとするのは危険?!

寄生したマダニを皮膚から無理に取ろうとすると、マダニの口器が皮膚に残り、化膿してしまうこともあるので注意が必要です。無理をせず、すぐに皮膚科へ行きましょう。

マダニ属とキララマダニ属の成虫は、長い口下片をもつことから、宿主への吸着力が極めて強いです。しっかり噛まれてしまうと、除去するのは簡単ではありません。

無理に引き抜こうとすると、マダニ口器(口下片)がちぎれて皮膚内に残ってしまいます。真皮内に口下片の一部が残ることにより結節を形成する場合があるため、これを完全に除去することが望ましいです。こうなってしまった場合、最終的には外科的に除去せざるを得ません。甘く見ないで、念のため病院へ行きましょう。

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