ハエ対策
ハエ(蝿)は、動物分類学上、双翅目・環縫亜目・有額線類に属する昆虫です。双翅目には他に系角亜目(カ、ユスリカ、ブユ、ヌカカ、チョウバエなど)と、短角亜目(アブ)とあります。したがってチョウバエはハエという名前がついていますが、本来の分類上、ハエではありません。
ハエの種類はきわめて多く、我が国だけでも数千種いるそうで、サシバエのように吸血するものもいます。
一般的に知られているハエは、建物内で最も多く見られる家住性のイエバエをはじめ10種類ほどで、ビル内を発生源とするのはイエバエです。
イエバエは外部で発生し侵入することも多々あり、その他、外部で発生しビル内へよく侵入してくるものとしては、オオイエバエ、ヒメイエバエ、クロバエ類、キンバエ類、ニクバエ類です。
長年、衛生害虫として恐れられてきたハエですが、都市部で水洗便所の普及とごみ処理の改良によって近年は著しく減少し、ビルではごみの処理を正しく行えばハエの発生の心配はなくなるほどになりました。
しかし、油断していると発生、あるいは外部から侵入する恐れがあることに変わりはありません。
ハエはその生態上、人畜の排泄物や屍体、その他あらゆる汚物に止まり、すぐに人間の食物や食器などに移る習性があり、かつ、幼虫(うじ(蛆))のとき汚物を食べ、成虫(ハエ)になってからそれをまき散らすため、多数の病原菌などを伝播し、多くの伝染病を媒介する衛生害虫とされます。
ハエの一生
ハエの一生を、イエバエを例にして説明しましょう。
ハエは、卵→幼虫(うじ)→さなぎ(蛹)→成虫の4期がある完全変態の昆虫です。
ゴミや堆肥などに産卵し、「卵」は1日で孵化して「うじ」となり、エサの中の暗いところに潜って生活し、2回脱皮し、3令幼虫がそのまま硬化縮小して「さなぎ」となります。
「3令」の「令」というのは、幼虫の段階のこと、卵からかえったばかりの頃は1令幼虫、最初の脱皮を終えると2令幼虫、2回目の脱皮が終わると3令幼虫と呼ばれます。この3令幼虫がさなぎになるのです。※令は齢とも書く
さなぎ化するときは、比較的乾燥した土の中などに移動してそこでさなぎになります。
卵は14~20日で成虫となり、成虫は羽化後2~3日以内に交尾し、交尾後数日して50~150個の卵を産みます。
成虫は寿命1~2ヶ月でその間に5~10回産卵するという強い繁殖力を持っています。
イエバエは植物性の食物を好み、昼間は部屋の中央空間に集まり、絶えず旋回していてしつこく人につきまとい、昔は5月にハエがやたらと目立ったので「五月蝿」と書いて「うるさい」と読まれるようになりました。
夜間は天井面に静止します。ちなみに、キンバエ、クロバエ、ニクバエは人間や動物の糞尿、動物死体で産卵、成長し、飲食も動物性の食物を好みます。
イエバエは体長6mmくらい、暗色で胸に4本の黒い縦のすじがあるのが特徴です。また、イエバエに限らずハエ類は体中に毛が多く、足の先端が湿っているなど細菌を身につけやすく、1匹の体上には平均150万の細菌がつき、体内にはこれ以上の細菌が入っています。