毒エサでネズミ駆除
毒エサでネズミを退治する方法。有効でかつ安全な成分は?
ネズミを毒殺するための薬剤を殺鼠剤(さっそざい)といい、現在用いられている殺鼠剤はほとんどが毒エサタイプとなります。
殺虫スプレーのように直接吹きかけたり、霧状にして部屋に充満させるようなものではない、ということです。
ネズミが通る場所に毒エサを設置して食べてもらう訳ですから、必要な条件は以下のようなものが挙げられます。
- ネズミがよく食べてくれること。怪しまれず、食べやすい
- ネズミだけに致死効果が高く、死体の回収が行いやすい
- 人間や他の動物には安全で、安価で使用が簡単
これらの条件を満たすものとして代表的なものは、黄燐、燐化亜鉛、シリロシド(海葱)、硫酸タリウム、クマリン化合物、ノルボルマイドがあります。具体的にどのような特徴があり、どんな場所に設置すると効果が高いのか、使用方法を解説していきます。
ネズミに効く毒エサの種類、特徴と使い方
ネズミに使う毒エサは、その作用面から、抗凝血性殺鼠剤と急性殺鼠剤の2つに分けられます。
簡単に言うと、「ゆっくり効くタイプ」と「急に効くタイプ」です。
抗凝血性殺鼠剤(ゆっくりタイプ)の種類と効く仕組み
抗凝血性殺鼠剤は、血液の凝固作用を阻害する効果を利用する毒エサをです。どういうことかというと、血液がものすごくサラサラになり、臓器に出血を起こして肺出血や貧血になり、ネズミは苦しむことなく”安楽死”します。
ネズミがこの毒エサを少量ずつ4~7日以上食べ続けると、血液中の赤血球が徐々に壊れていき、血清タンパク質の一種であるトロンボゲン(プロトロンビン)量が低下し、血液の凝固性が阻止される、という仕組みです。
抗凝血性の薬剤は、クマリン系に属するもので、以下のようなものがあります。
抗凝血性の薬剤
ワルファリン、クマテトラリン(エンドロサイド)、フマリン
抗凝血性殺鼠剤のメリット
- 食べやすくネズミに警戒されにくい
- 死体の回収が楽
- 安全性が高い
抗凝血性の毒エサのメリットは、仲間のネズミに警戒心を与えないため、多くのネズミが食べ続けてくれる点にあります。
有効成分(毒物)の含有量が少ないので、喫食性がよく、連日少量ずつ食べることにより、微量の毒物で安楽死させる効果があるため累積毒性殺鼠剤ともいい、人に対しては安全性が高いです。
また、血液がサラサラになることで目に出血するため、目が見えなくなったネズミは光を求めて明るいところに出てきて死ぬことが多くなり、死体の回収が容易になります。
抗凝血性殺鼠剤のデメリット
抗凝血性殺鼠剤は長期間食べ続けさせなければならないため、ネズミに薬剤の耐性、抵抗性を与えてしまう場合があります。
この薬剤と水だけで100日以上も生きる抵抗性の高いスーパーネズミも出現しています。
また体内にビタミンKが多くあるネズミには効果がないというところも欠点です。
急性殺鼠剤(速効タイプ)の種類と効く仕組み
1回の喫食で急性的に死亡する有効成分(毒性)の含有量が高い薬剤を急性殺鼠剤または急性毒殺鼠剤といいます。
この急性殺鼠剤はさらに2タイプに分かれ、接触後10時間未満で死亡する速効性毒急性殺鼠剤と、10時間以上経過して死ぬ遅効性殺鼠剤とがあります。
10時間未満で効くタイプ(速効性)
黄リン、リン化亜鉛、シリロシド(海葱)、ノルボルマイド
10時間以上かかるタイプ(遅効性)
硫酸タリウム、アンツー
黄燐(黄リン)
俗に「ネコイラズ」と呼ばれる猛毒で、黄燐そのものにグリセリンなどを加えて酸化を防いものです。
しかし、開封すると酸化し白煙をあげ、ときには発火する危険性があり、近年はあまり用いられなくなっています。
燐化亜鉛(リン化亜鉛)
黄燐と亜鉛を化合させることで安定した物質としたもの。
この毒にあうと(体内に入ると)猛烈に反応してリン化水素ガスを発生し、それがネズミを中毒死させます。死亡するとガスは死体から発散して無毒化するので、死んだネズミを天敵のイタチなどが食べても死亡することはありません。
殺鼠剤としては、小麦粉、大豆粉、糖蜜などネズミの嗜好品に合わせて配合し、色素を加えて黒色に着色、唐辛子エキスを加えて辛味を付け、粒状、糊状、粉状の3種類が作られます。
シリロシド
海葱と俗称されますが、アフリカの北部に自生するユリカの植物の球根に含まれるシリロシドに毒作用があるのを利用したものです。高価なのが難点です。
硫酸タリウム
タリウムという重金属化合物の毒性と硫酸とを化合することで安定させたもの。
殺鼠効果は確実ですが、効き目は遅効性です。化学的に安定しているので、毒エサに配合された後も分解せず、また体内に入って死亡してからも残留するので、死んだネズミを食べたイタチが死んだり、中毒を起こすなど二次中毒(二次被害)を引き起こす場合があります。
よって、屋外における野ネズミの駆除には向いていません。
急性殺鼠剤のメリット、デメリット。使いどころと注意点
急性殺鼠剤はネズミが急増したときに適し、2~3日を限度に用います。
しかし、クマリン系殺鼠剤(ゆっくりタイプ)に比べて毒性(有効成分)の含有量が多いので、ネズミが致死量に至るまで食べ切らないうちに症状が表れて、苦しみ出してしまう場合があります。
こうなると、食べている仲間のネズミがストレスを起こし、警戒して避けるようになり、期待しているほどの駆除効果が得られないことがあります。
急性殺鼠剤は毒性が極めて高く、かつ急激に効果を表すので、これの使用に際してはクマリン系殺鼠剤よりは格段の注意が必要で、ネズミ以外に誤食されるようなことは絶対に避けなければいけません。
毒エサを設置する場所
厨房
調理台、ガスレンジ、食器棚のまわり、厨芥容器、排水溝の付近、湯沸器、流し、ごみ容器のまわり
食堂
カウンター、レジ内部、クーラーや戸棚の裏側
食品倉庫
食品棚、収納庫、ダンボール箱の周辺
天井付近
ダクト断熱材の内部、照明器具や配管の中や周囲
地下付近
ごみ集積所やごみ処理施設、地下ピット周辺
毒エサの種類と特徴
薬剤 | 性質 | 喫食性 | 殺鼠力 | 効果 | 忌避性 | 人畜危害 | 経済性 | 二次中毒 |
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黄燐 | 暗所で燐光を発する。強い特異臭あり。 | よい | 強い | 速効 | ほとんどない | ある | 安い | あり |
燐化亜鉛 | ネズミの体内で燐化水素を発生して殺す。 | あまりよくない | 強い | 速効 | 多少ある | ある | 普通 | なし |
シリロシド(海葱) | 人畜が誤って食べると吐く。 | よい | かなり強い | 速効 | ほとんどない | 少ない | やや高い | あり |
硫酸タリウム | 殺鼠力が大きく化学的に安定している。 | よい | 強い | 遅効 | ほとんどない | 多少ある | 普通 | あり |
クマリン化合物 | 血液凝固を阻害する。連日少量摂取させて殺す。 | 非常によい | 強い | 累積 | ほとんどない | ない | やや高い | あり |
ノルボルマイド | ドブネズミ・クマネズミだけに特効的。 | よい | 強い | 速効 | 多少ある | ない | 高い | なし |