ネズミが運ぶ病気と寄生虫の種類

ネズミがもたらす病気と媒介する寄生虫

ネズミの害。病気や寄生虫にはどんなものがある?

ネズミがもたらす病気には食中毒、ワイル病、鼠咬症(そうこうしょう)、ペスト、発疹熱、日本住吸虫病ものがあります。媒介する寄生虫はトキソプラズマ原虫や小型条虫、多包条虫、広東住血線虫、旋毛虫らがいます。

ネズミが運ぶ病気と寄生虫にはどんなものがあるの?

ネズミは病気を運び、人間に感染させるやっかいな衛生動物(衛生的に人間に良くない影響を与える動物、虫の場合は衛生害虫)です。

ネズミが原因となってもたらされる病気、ネズミに寄生して病気の原因となる寄生虫にはどんなものがあるのか、また人間が作り出すビルなどの人工的な環境がどのような影響を及ぼすのか解説していきます。

食べ物への被害、建物の破損、見た目が怖い・・・だけではありません。ネズミが病気の運び屋となり、サルモネラ菌による食中毒や、ワイル病、鼠咬症(そうこうしょう)の原因を作っているということを覚えておくのは大切なことです。

ネズミがもたらす病気とは

ネズミに起因する病気には、主にどんなものがあるのでしょうか??

代表的なものは、食中毒、ワイル病、鼠咬症(そうこうしょう)、ペスト、発疹熱、日本住吸虫病などです。

日本ではとくに夏期に食中毒が多発しますが、これはサルモネラ菌が付着・繁殖した食品を食べることにより、この細菌が腸管に入り、細菌そのものが主体となる中毒症状により引き起こされるものです。

俗に食中毒、正式には「伝染性食中毒」「サルモネラによる食中毒」といいます。

食中毒の症状はサルモネラ菌が腸管に入ってから通常6~24時間の潜伏期間後、腹痛、発熱(38~40℃)、悪心、嘔吐、下痢といった急性胃腸炎の症状を引き起こします。

サルモネラ菌は1つじゃない

「サルモネラによる食中毒」の原因となるサルモネラ菌ですが、実は1つの菌のことを指している訳ではありません。専門的には腸チフス、パラチフス、食中毒などの病原菌の総称で、150種類以上の種類が報告されています。ですから、正しくは「サルモネラ菌たち」となるのです。

乳酸菌もLG21とかL-92など、色々ありますよね。あれと一緒です。

ともかくこの細菌は大きさが1.2~1.8マイクロメートルで、発育の最適温度が37℃(温暖な環境)、最適phは7~8(ちょうど中性ど真ん中)、熱に対する抵抗力は強く60℃の状態で20分経過しなければ死滅しません。

下水から始まり、食べ物、飲み水から人間へ感染する

サルモネラ菌は下水や汚水などで繁殖し、ネズミ自信も保菌していることが多いです。ネズミや衛生害虫の代表であるゴキブリなどがサルモネラ菌のたくさんいる下水などをうろつきまわってこの菌を身体につく。そして、菌をたっぷり含んだ排泄物を出すことなどで、ビルや家の厨房などに菌をばらまきます。

さらに、これらの菌で人間用の食品が汚染されることになります。

やっかいなのは、汚染されても食品は変色せず、臭いや味の変化もなく、乾燥した食品の中でも長期間に渡り菌が生きているということです。

ワイル病(黄疸出血性レプトスピラ症)

ワイル病は正式には黄疸出血性レプトスピラ症といい、ネズミの尿中のらせん菌の一種であるレプトスピラが小川や下水などに入って増殖し、その汚染水に入った人間の皮膚や粘膜から感染するものです。

感染した場合、1~2週間の潜伏後、高熱、黄疸、筋肉痛を起こし、重症の場合は意識不明となります。風邪の症状と紛らわしいことが多いのですが、致死率は10~20%で、回復後、眼炎となり、視力障害を残すことがあります。

治療法としてはクロロマイセチンなどの抗生物質が有効です。

日本住血吸虫の保虫者

日本住血吸虫病は不治の病と呼ばれる恐ろしい病気です。

その症状は肝臓、脾臓の腫大や腸カタル、腹水、発育障害、貧血などを引き起こすもので、発病原因は長さ2~3mmの「日本住血吸虫」という寄生虫です。

日本住血吸虫は河川など水辺で発育します。生み付けられた卵は水中で幼虫となり泳ぎ回り、やがて水底に生活する1~2センチメートルの細長い巻き貝の一種であるミヤイリガイ(宮入貝)の体内に入り込みます。

そして、体内で成長し、再び水の中を泳ぎ回り、卵を生みます。

ネズミがたまたまこの卵の付着したものを食べると、卵はそのままネズミの消化管の中を通過して体外に出ます。それが水辺であると卵は水中で幼虫となり、ミヤイリガイがいると寄生して成長することになります。

この場合、ミヤイリガイさえいなければこの寄生虫は成長できません。問題なのは、卵を体内に入れたネズミが人間の近くでその卵を排出しそれを知らずに人間が口の中に入れてしまうことです。

例えば、ネズミによって運ばれた卵が飲料水で孵化(ふか)し、この日本住血吸虫の幼虫のいる水を誤って人間が飲むと、人間が最終宿主となり、不治の病になってしまうのです。

現在では、日本住血吸虫病の中間宿主であるミヤイリガイがほぼ絶滅し、日本住血吸虫病の分布域は著しく縮小してきています。

しかし、ネズミは日本住血吸虫病の他にも、トキソプラズマ原虫や小型条虫、多包条虫、広東住血線虫、旋毛虫など多くの寄生虫病の保虫者であり、これらの寄生虫を運びます。ネズミが病気の運び屋であることを覚えておくのは大切なことです。

ネズミが媒介する病気一覧

病名病原体感染経路
鼠咬症(そこうしょう)スピロヘータ直接
ワイル病レプトスピラ汚染水を介して
サルモネラによる食中毒サルモネラ(細菌)食品を介して
ペスト(黒死病)ペスト菌ねずみに寄生する、ノミを介して
発疹熱リッチケアねずみに寄生する、ノミを介して
ツツガムシ病リッチケアねずみに寄生する、ツツガムシを介して
日本住血吸虫病日本住血吸虫ミヤイリガイが中間宿主

ネズミから人間へ。病気の感染経路

病気を運ぶネズミですが、人間はペットとして「意識的に飼う」ことは通常ありませんよね。

しかし、近代的なビルや民家で生活する私達は、ネズミは無論のこと「ゴキブリ」や「カ」など衛生害虫と呼ばれるものと同居しなければならない状況に陥っています。

なぜなら、現代のマンションやビルは気象や気候の変化の影響をさほど受けることなく、一年中暖房がきいて生存に適した温度と湿度になっているからです。

その上、人間が食べ残した生ゴミや、てきとうに管理された保管食品、厨房の床や排水口などには食品残滓(ざんし・野菜の切りくずなど)といったエサとなるものが豊富に揃っています。

しかも、ビルや建築物内では人間が行う駆除を除けば、天然の外敵、つまり天敵に襲われる心配もありません。

つまり、人間が住む場所はネズミや衛生害虫にとっても快適な環境であり、天敵もおらず100%食べ物を人間に依存できる、天国のような場所なのです。

人間が害虫を呼び込んでいる

このように、近代のビルはネズミや害虫の人為的発生源となっています。

そして皮肉なことに、近代化が進んだビルは建築設備の構造が複雑になっており、このことがネズミの活動範囲を広げ、繁殖に勢いをつけてしまっています。

近代的な都市や街という人間の人工的な環境の中で、人間が自ら進んでネズミを繁殖させている(飼育している)という現実をよく認識しなければなりません。

ネズミが媒介する病気一覧

病名病原体感染経路
鼠咬症(そこうしょう)スピロヘータ直接
ワイル病レプトスピラ汚染水を介して
サルモネラによる食中毒サルモネラ(細菌)食品を介して
ペスト(黒死病)ペスト菌ねずみに寄生する、ノミを介して
発疹熱リッチケアねずみに寄生する、ノミを介して
ツツガムシ病リッチケアねずみに寄生する、ツツガムシを介して
日本住血吸虫病日本住血吸虫ミヤイリガイが中間宿主
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